旅の171日目 – 日記
地球歴2482年、星間暦元年
今日は会議で、次の一手をどうするかが議論された。
昨日、球体が「五」に応じて「六」を返したことは、単なる模倣ではなく“先へ進め”という合図だと誰もが感じていた。ただ、その解釈が正しいかどうかを確かめる方法について意見が分かれた。
最終的に決まったのは、次の信号を急がずに、まずこれまでの応答を体系的に整理すること。数列として理解されているのか、それとも別の意味を持っているのかを判断できる基準を作る必要がある。
僕自身も、それが妥当な選択だと思う。拙速なやり取りは誤解を招きかねない。
午後は、解析班の手伝いでログを並べ替える作業をした。こうして全てを時系列で見返すと、応答が少しずつ複雑になっているのがわかる。模倣だけだった最初の段階から、今は新しい要素を差し込むようになっている。
それはまるで、言葉を覚え始めた子供の発声のようにも見える。
夜、自室で古い地球の数学書を読み返した。数字の起源や数列の美しさに関する章を目で追いながら、ふと思った。もし相手が本当に“数”を通して僕たちに話しかけているのなら、次に示されるのは単なる数列ではなく、もっと深い秩序――「法則」なのかもしれない。
明日以降、整理が終わったら次の信号を考えることになるだろう。
ここから先が本当の「対話」の始まりになる気がしている。
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