旅の158日目 – 日記
地球歴2482年、星間暦元年
今日は磁場変化を使った応答テストの初日だった。
専用ユニットを漂流船の中枢室に設置し、球体周辺の磁場をミリテスラ単位で段階的に変化させる。反応があればセンサーが即座に記録する仕組みだ。
開始から30分は何の変化もなかったが、特定の強度域に入ったとき、球体表面が微かに発光した。発光は短く、1秒にも満たなかったが、波長分析の結果、それが過去の光パターンと一致しない新しいシグナルであることが分かった。
偶然ではないはずだ。
午後の再試行では、その発光が連続して二度発生した。間隔は約4.3秒。規則性があるかはまだ判断できないが、少なくとも球体は磁場変化に対して感受性を持っていると考えていいだろう。
作業を終えて戻る途中、ふと考えた。
この反応が「こちらの存在を認識している」という証拠だとしたら、次は何を送るべきだろうか。単なる信号のやり取りではなく、意味を持った“挨拶”のようなものが必要になるかもしれない。
明日は磁場テストの条件を変え、より複雑なパターンを試す予定だ。
今までの光や音の実験と組み合わせれば、もしかすると――球体から、もっと明確な「言葉」が返ってくるかもしれない。
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