旅の201日目 – 日記
地球歴2482年、星間暦元年
今日、僕たちはついに「応答」を送った。
彼が発した言葉と、球体の光のパターンを解析して導き出した共通の周期――それを再現する形で信号を送り返したのだ。ほんの数秒の送信だったが、船内の空気は息をすることさえ忘れるほど緊張していた。
数分後、球体が反応した。
今度の光は、これまでにない穏やかさを帯びていた。一定のリズムで明滅しながら、まるで心拍のように「間」を刻む。その中央で、ケースの中の男が再び声を発した。前よりも明瞭で、はっきりとした音列。
僕たちの信号に、彼が“応えた”のだ。
意味はまだ分からない。それでも、この瞬間に確かに何かが通じ合った気がした。
音と光、生命と機械――あらゆる境界が溶け合い、ひとつの「対話」として成立したように思えた。
夜、自室で記録を聞き返した。声をデータとしてではなく、ただ「声」として聴いてみた。
そこには恐怖ではなく、どこか懐かしい響きがあった。
まるで、遠い昔から僕たちを待っていたような――そんな温度を感じた。
明日も観測を続ける。
この旅が“彼の声”に導かれていたのだとしたら、その理由を確かめる時が来ているのかもしれない。
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