宇宙船ノア・アルカ号 乗船日記 239日目

旅の239日目 – 日記
地球歴2482年、星間暦元年

セリナの表層観測データがさらに精密になった。
最新の分光分析では、大気中にわずかながら有機化合物の存在が確認された。
生命活動の痕跡と呼ぶには早いが、それでもこの宇宙の静寂の中で、それは確かに“生”の名残を感じさせる兆候だった。

一方、アビスの状態も不思議な安定を見せている。
ここ数日は強い反応を示すこともなく、穏やかな覚醒状態を保っている。
ただ、セリナの観測データが更新されるたび、球体がごく微かに脈打つ。
その光は、まるで星の呼吸と同期しているようで、僕たちはそれを「共鳴現象」と呼び始めた。

科学班はアビスとセリナの関係を「意識的リンクの可能性」として記録し始めている。
だが、僕はもう少し違う印象を持っている。
――まるで、アビスはこの星を“懐かしんでいる”ようなのだ。

観測窓から見えるセリナは、今日も静かに輝いていた。
その青緑の光を見ていると、不思議と胸の奥がざわつく。
この星が僕たちの新たな家となるのか、それとも、彼がかつて失った何かの残響なのか。
どちらにせよ、もうすぐ答えが見えてくるだろう。

明日は、降下シミュレーションの最終段階に入る。
着陸チームの編成も始まりつつある。
――僕たちは、この宇宙の長い航海の先で、ようやく“地”を踏もうとしている。

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