宇宙船ノア・アルカ号 乗船日記 232日目

旅の232日目 – 日記
地球歴2482年、星間暦元年

「言語的図形」を視覚化してアビスに提示した。
その瞬間、彼の表情が明確に変わった。
驚き、そして理解――そんな感情が一瞬にして浮かび、彼は静かに手を伸ばし、ホログラムの中に指先を差し入れた。

触れたわけではない。けれど、彼の動きに呼応して図形がわずかに変形し、球体の光がそれに合わせて明滅した。
まるで会話をしているようだった。
言葉ではなく、形と光による対話。
彼の記憶の一部が、視覚的な構造として再生されているのかもしれない。

解析班は、アビスの脳波と図形の変動を重ね合わせた。
結果は――完全な同期。
彼が見つめるだけで、図形の一部が変化する。
それは思考が直接、映像へと変換されているような現象だった。

アビスは何度か息を整えたあと、小さく口を開いた。
「……カナトゥル。」
録音には確かにその音が残っていた。
意味は不明だが、彼が初めて“意識して”発した言葉だった。

夜、観測窓から見える星を眺めながら、その言葉を何度も繰り返してみた。
カナトゥル――音の響きにはどこか、“場所”を指すような印象があった。

明日は、この言葉と関連する座標を探索する。
もしかすると、アビスが見ている“原風景”が、そこにあるのかもしれない。

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