宇宙船ノア・アルカ号 乗船日記 227日目

旅の227日目 – 日記
地球歴2482年、星間暦元年

アビスの反応が、明確な“方向”を持ち始めた。
漂流船の構造を再現したシミュレーション映像を提示した際、彼は特定の区画が映るたびに強い反応を示した。それは、これまでほとんど注目してこなかった閉鎖空間――記録上では「区画E-7」。通常の構造配置と微妙に異なるその場所に、彼の視線が何度も固定された。

脳波の変化も顕著で、同時に球体が再び光を放った。
その周期を解析すると、驚くことにノア・アルカ号の生命維持システム信号とわずかに同期していた。これは偶然ではあり得ない。アビスと球体は、この船そのものと何らかの共鳴を起こしている――そう考えるしかない。

今日、彼が短く発した言葉を音声解析にかけたが、既知の言語体系には一致しなかった。ただ、音の並びの中に“周期的なリズム”が存在しており、それが球体のパルスとほぼ同じ間隔であることがわかった。まるで彼と球体が、互いを介して「思い出している」ようだった。

一日の終わりに、僕は記録を整理しながら気づいた。
この漂流船とアビス、そして球体――それぞれが独立した存在ではなく、ひとつのシステムとして生まれた可能性がある。もしそれが真実なら、アビスの記憶を解くことは、この船の過去を解き明かすことと同義になる。

明日は、区画E-7の内部構造を再現して提示してみる予定だ。
あの沈黙の奥で眠る“最初の記憶”が、そろそろ形を取ろうとしている気がする。

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