宇宙船ノア・アルカ号 乗船日記 226日目

旅の226日目 – 日記
地球歴2482年、星間暦元年

アビスは今日も、断片的な言葉を発し続けていた。まだ意味は解明されていないが、その音の並びは徐々に複雑になり、まるで“記憶を語る準備”をしているかのように感じられる。彼の瞳の動きも昨日までとは違っていて、星図や船内の構造物を見つめる時間が長くなった。特に、漂流船の断面図を投影したときの反応は顕著で、しばらくその一点を見つめ続けていた。

解析班は、アビスの言語らしき音列と球体のパルスとの間に明確な相関パターンがあることを突き止めた。発声の直後に球体の周期が変化し、わずかな遅延を伴って船内の電磁環境にも影響が現れるのだ。これは単なる反応ではなく、何らかの“意志的な出力”が起きているとしか考えられない。

一方で、アビス自身は静かだ。沈黙の合間にふと見せる表情には、迷いとも哀しみともつかない感情が浮かんでいるように見える。記憶を取り戻すことが、彼にとって喜びだけではないのかもしれない。

夜、自室で今日の記録を整理しながら思った。
僕たちは、未知の存在の“記憶”を解こうとしている。しかし、もしかすると彼の記憶こそが、僕たちがこの宇宙で向き合うべき問いそのものなのかもしれない。

明日は、アビスが注視した漂流船の構造を中心に、新たな刺激実験を行う予定だ。その中に、沈黙の奥に隠された“最初の記憶”が眠っている気がする。

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