旅の247日目 – 日記
地球歴2482年、星間暦元年
惑星セリナまでの距離は、航路上で残りおよそ17日。
船の外壁を流れる星々の光が、わずかに青みを帯びて見えるようになった。
航行速度は安定しており、燃料消費率も計算どおり。
それでも、船内にはゆるやかな緊張が漂っている。
ゼオフォスの教訓が、誰の中にもまだ消えずに残っているのだ。
今日のブリーフィングでは、降下計画の再確認が行われた。
すべての手順に二重の安全策が設けられており、
地表との直接接触はあくまで“観測目的”に限られる。
未知の生態系に対する接触は禁止――この言葉が繰り返された。
僕も、環境維持ユニットの担当として、
大気サンプル採取と循環装置の圧力テストを念入りに行った。
アビスは、今日もセリナの映像に反応していた。
ただ、以前よりも穏やかで、静かだった。
球体の光は一定のリズムを刻み、まるで船内の心拍のように安定している。
セリナが、彼の故郷に似ている――その仮説を裏付けるような落ち着きだった。
夜、観測窓の外で、セリナは少しだけ大きく見えた。
その青緑の光が、ノア・アルカ号の船体を淡く照らしていた。
この星が僕たちに何をもたらすのかは分からない。
だが、今はただ静かに――この“近づいてくる青”を見つめていたい。
明日は、地表スキャンの第二段階に入る。
地形データの解析が進めば、降下地点が正式に決まるはずだ。



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