旅の271日目 – 日記
地球歴2482年、星間暦元年
今日の分析会議では、ずっと引っかかっていた疑問が再び議題に上がった。
――「なぜ、これほど条件の整った惑星に生命の痕跡がまったくないのか?」
セリナの大気組成は安定している。
地表温度も生存可能域に収まっている。
水分は少ないが、乾燥環境で生命が成立し得ることは地球の例が証明している。
それでも、微生物レベルの痕跡すらない。
僕自身、この“完璧すぎる静謐”に違和感を覚える。
自然に生まれた環境なら、多少なりとも「ゆらぎ」や「痕跡」があるはずだ。
ところがセリナのデータは、あまりにも整いすぎている。
まるで、何かがかつて存在していて、それが跡形もなく取り除かれたような……そんな印象すら覚える。
もちろん、これはあくまで仮説にも満たない直感だ。
乗員に無用の不安を与えるべきじゃないから、今は胸の内で留めておく。
それでも、この静けさの理由を探ることは、僕たちの安全のためにも必要だと思う。
アビスは今日も落ち着いていて、リハビリをかねて船内をゆっくり歩いていた。
セリナの映像を見ても特別な反応はなし。
“外から来た存在”としての距離が、こちらとしても助かっている。
夕食は軽めに、ケイトの作った雑穀サラダと温かいスープ。
セリナの謎に頭を使いすぎていたのか、食べ終わった頃にようやく少し気持ちが緩んだ。
明日は地表の微弱放射線の分布を再確認する予定。
生命の不在には、きっと理由がある。
それを見つけられるかどうかが、この星に降り立つ覚悟につながるはずだ。



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