宇宙船ノア・アルカ号 乗船日記 306日目

旅の306日目 – 日記
地球歴2482年、星間暦元年

今日はミラの作業を間近で見る時間が多かった。地表に展開する予定の植物ユニットについて、彼女は終始落ち着いた様子で確認を進めていた。土壌そのものよりも、まずは閉じた環境の中で植物を根付かせる。その順序を崩すつもりはないらしい。

セリナの土は無機的で、生命の履歴をほとんど持たない。ミラはそれを否定的には捉えていない。何もないからこそ、余計な干渉を受けずに育てられると言っていた。その言葉には、経験に裏打ちされた確信があった。

彼女が扱う植物は、食料であると同時に環境の指標でもある。発芽や成長の速度、葉の状態、水の吸い上げ方。その一つひとつが、この星が人の生活を受け入れるかどうかを静かに示す。数値だけでは測れない部分を、彼女は丁寧に見ている。

居住ブロックが降ろされたあと、最初に安定させるべきものは空気と水、そして植物だとミラは考えている。建物よりも先に、環境を整える。その発想は、セリナでの生活を長期的に考えたものだと思う。

夕食には、彼女が管理しているユニットで育てられた葉物が少量使われていた。特別な味ではないが、船内とは少し違う感覚があった。

ミラは、この星に根を下ろす準備をしている人の一人だ。進む人と残る人。その違いは立場の差であって、価値の差ではない。そのことを、彼女の作業を見ながら改めて感じた。

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