旅の322日目 – 日記地球歴2482年、星間暦元年
今日は作業の合間に、兄のことを考えていた。
地球に残った兄とは、定期的に短い通信を交わしているが、タイムラグのせいで会話というより記録の交換に近い。
それでも、生きているという事実が確認できるだけで、気持ちは落ち着く。
兄は地下シェルターでの生活を続けている。
地上の自然はほとんど失われ、閉じた環境の中で時間をやり過ごしていると聞く。その状況を思うと、セリナで感じている静けさとは、また別の重さがある。
僕がこうして星を移動し環境を整える役割を担っている一方で、兄は地球に留まり、過去をつなぎ止めている。同じ家族でも、立っている場所はまったく違う。それでも、どちらが正しいという話ではない。
セリナにいつか雨が降るかもしれないという考えが浮かんだとき、真っ先に思い出したのも兄だった。地球で当たり前だった風景を、次の世代にどう残すのか。その問いは、僕一人のものではない。
夕食は簡単な保存食だった。今日は少しゆっくり食べた。
兄が見ている地球と、僕が立っているセリナ。その間に横たわる時間と距離をどうやって埋めるのか。答えは出ていないが、考え続けること自体が今の僕にできることなのだと思う。



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