旅の353日目 – 日記
地球歴2482年、星間暦元年
今日は久しぶりにアビスの姿を見かけた。
拠点とノア・アルカ号をつなぐ通路の近くで、ゆっくりと歩いているところだった。
以前よりも歩き方は自然で、身体の動きにも無理がない。
医療班の報告どおり、回復は順調らしい。
彼は通路の壁に設置された小さな観測窓の前でしばらく立ち止まり、セリナの地表を静かに眺めていた。
特別な行動をしているわけではない。
ただ、そこに立っているだけなのに、どこか時間の流れが違う場所から来た人のようにも見える。
僕たちはまだ彼についてほとんど何も知らない。
彼自身も、自分の過去を思い出している様子はない。
それでも、こうして同じ船と拠点の中で生活していると、彼の存在が少しずつ日常の一部になっていることに気づく。
地下水設備の点検は今日も問題なし。
植物区画の新芽も維持されている。セリナの環境は相変わらず安定している。
夕食は温かい穀物スープ。
作業の後だったので、ゆっくり食べる時間が心地よかった。
アビスが窓の外を見ていた姿が、なぜか少し印象に残っている。
この星の景色を、彼はどんな気持ちで見ていたのだろう。



コメント