旅の91日目 – 日記
地球歴2482年、星間暦元年
エリスが解析を進め、さらにいくつかのログを復元することに成功した。これまでより少し詳しい情報が出てきたが、その内容はますます不穏なものだった。
「未知の生物との接触を確認」
「防衛システム作動」
「封鎖完了」
「クルーの生存率 0%」
未知の生物——。やはり、この船の乗員たちは何かに遭遇し、それに対して「封鎖」という手段を取った。しかし、その結果、彼らは全員死亡した。
「……扉の向こうにいるのは、その”何か”ってことか?」
カイが腕を組んで考え込む。
ゼインは冷静にデータを分析していたが、「もしこれが本当に未知の生物だとしたら、単なる生体反応ではなく、何か高度な特性を持っている可能性がある」と言った。
「たとえば?」と僕が聞くと、彼は少し間を置いて答えた。
「”何か”がまだ生きている可能性がある。」
その場に静寂が訪れた。
封鎖されていたとはいえ、この船の一部は今も電力を維持している。そして、「生存率 0%」と記されていたが、それがこの船にいた乗員たちのことを指すとは限らない。
「艦長、どうする?」
エリスが尋ねると、ヴィクター艦長はゆっくりと息を吐き、「今はまだ動くべき時ではない」と言った。
「封鎖が維持されているなら、それを解く理由はない。我々の目的は探査であって、危険を冒すことではない。」
カイは少し不満そうだったが、納得しているようだった。
「……確かに、今は情報が足りなすぎるな。」
ひとまず、さらなる解析が続けられることになった。しかし、乗員の間には確実に緊張が走っている。何かがいるのか、それともただの残骸なのか。
今はまだ分からないが、答えが出る日は遠くない気がする。
夜、窓の外の星々を眺めながら考えた。もしこの船の封鎖が解かれたとき、その先に待っているものは希望なのか、それとも恐怖なのか——。
僕たちはまだ、その選択をする準備ができていないのかもしれない。
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