旅の109日目 – 日記
地球歴2482年、星間暦元年
今日は、少しだけ進展があった。
エリスが、内部応答の波形パターンを他の過去ログと照合する作業を続けていたところ、ごく初期の航行ログの中に似たパターンを見つけたという。
それは、漂流船に最初に接近した際、遠距離スキャン中に一瞬だけ検出された信号と酷似しているらしい。通常航行時の背景ノイズに紛れてしまうほど微弱だったため、当時は特に注目されていなかった。
つまり、あの漂流船は、僕たちが近づいた時点で何らかの”応答”を示していた可能性がある。
それが意識的なものだったのか、単なる反射的な反応だったのかは依然不明だ。ただ、完全な死んだ構造物だと考えていた前提は、少し揺らいだ。
ゼインもこの件には慎重で、現時点で船の安全を脅かす兆候はないと確認してくれている。ただ、「封鎖区域の内部に未知のプログラムが残されている可能性は捨てきれない」とも話していた。
慎重に調べるべきだ。それは間違いない。でも、ここまで断片的とはいえ何らかの”反応”が続いている以上、僕たちはこれを無視するわけにはいかない。
夜、共有スペースを通ったら、ミラが植物の手入れをしているのが見えた。誰も知らないうちに芽吹き、成長していく小さな命。それと同じように、あの漂流船の内部にも、まだ何かが息づいているのかもしれない。
明日はもう少し、エリスとデータの分析を深める予定だ。焦らず、しかし見落としのないように。
こうして少しずつ、真実に近づいていきたい。
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