旅の102日目 – 日記
地球歴2482年、星間暦元年
何も変化はない一日だった。
封鎖区域の監視データは安定していて、エネルギー反応も昨日と変わらない。ゼインが定期的にシステムチェックをしているけど、特に異常は見つかっていない。
このまま何も起こらなければ、やがてこの件も忘れられていくのかもしれない。いや、完全に忘れることはないにしても、普段の船内の生活の”背景”になっていくんだろう。
今日は環境維持ユニットの点検をしながら、久しぶりに植物ユニットにも立ち寄った。ミラが世話をしている植物は、相変わらず静かに成長を続けていた。あの封鎖区域のことなんて関係ないみたいに、ただ光を求めて伸びている。
「変わらないものがあるのはいいことだね。」
ミラがそんなことを言っていた。僕もそう思う。
でも、心のどこかで”何も変わらないこと”が少し怖くなっている自分もいる。
未知のものに対する緊張が続くより、何も起こらないまま時間が過ぎていくことのほうが、じわじわと不安を大きくしていく気がする。
考えすぎかもしれない。実際には、こうして”何も起こらない日”があることのほうが、ずっとありがたいはずだ。
それでも、”何か”は確かにあった。あの扉の向こうには、僕たちがまだ知らない”過去”が閉じ込められていた。
このまま扉を開けずにいれば、それは”過去のまま”で終わるのかもしれない。
……でも、それで本当にいいのか?
今は答えが出ない。だから、今日は考えるのをやめようと思う。
明日も、船は静かに進む。
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