旅の101日目 – 日記
地球歴2482年、星間暦元年
今日は特に新しい動きはなかった。
封鎖区域の監視システムは変化なし。エネルギー反応も安定していて、”再起動”と考えられていた異常な動きも今は止まっている。昨日のミーティングで決まった通り、今後はデータ解析を進めつつ、直接的な調査はしばらく控えることになった。
そのせいか、船内の空気は少し落ち着いてきたようにも感じる。でも、それは”何も変わっていない”からではなく、”何もできない”からだ。どこかに不安が残ったまま、ただ時間が過ぎている感覚がある。
僕は今日も環境維持ユニットの点検をしていた。作業をしていると、普段通りのルーチンのように思えてくるけど、どこか違和感がある。ほんの数日前までは、こんな感覚はなかったのに。
食事の時間に共有スペースへ行くと、乗員たちは以前と変わらないように過ごしていた。でも、話題はほとんど”あの扉のこと”だった。みんな口には出さなくても、何かしら考えているのが分かる。
ただ、時間が経つほどに、この状況が”日常”になっていくのかもしれない。僕たちは、知らないうちに適応してしまうものだから。
夜、いつものように窓の外を眺めた。星々は何も変わらず、静かに光っている。僕たちの進む先も、昨日と変わらないはずなのに、どこか違って見えた。
……何も起こらないのが、一番いいことなのかもしれない。そう思うべきなんだろう。
でも、”何も起こらない”というのは、本当に”何もない”ことと同じなんだろうか。
明日も、監視は続く。
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