旅の95日目 – 日記
地球歴2482年、星間暦元年
封鎖区域のエネルギー反応が、明らかに上昇している。
昨日までは微弱だったものが、今日ははっきりとした波形を見せ始めた。ゼインがモニターを見ながら眉をひそめる。
「……これは単なる残骸じゃないな。何かが作動している。」
エリスが急いでデータ解析を進めるが、相変わらずログの解読は進んでいない。だが、わずかに新たな情報が出てきた。
「再起動プロトコル – 実行中」
「再起動?」
「まるで、何かのシステムが目覚めようとしているみたいね。」エリスが冷静に言った。
艦長も状況を確認し、船内に通達を出した。
「全乗員に通達。封鎖区域内でエネルギー反応の増加を確認。現在のところ危険レベルは不明だが、警戒態勢を維持すること。」
静かだった船内が、少しずつ緊張感に包まれていくのを感じた。
カイは「そろそろ本格的に調査するべきじゃないか?」と言ったが、ライラがすぐに「無茶はやめて」と制した。
「まだ正体が分かっていないのよ。再起動されているものが、敵意を持っていない保証なんてない。」
ゼインは黙ってデータを睨みつけた後、ため息をついた。
「問題は、これが止まるのか、それとも完全に起動するのか、だな。」
艦長はまだ封鎖区域を開ける判断を下していない。だが、もしこのまま反応が強まり続けたら、いずれは僕たちが”向こう側”の存在に気づかれる可能性がある。
ミラは「もしかして、もうすでに”起こしちゃった”のかもね」と呟いた。
夜、監視モニターを覗くと、封鎖区域内のエネルギー反応がまた僅かに上昇していた。
まるで、ゆっくりと目覚める生き物のように。
このまま何もしなければ、向こうが先に行動を起こすかもしれない。
僕たちは、待つしかないのか? それとも——。
明日、艦長は決断を迫られることになるだろう。
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