旅立ちの日 – 日記
地球歴2482年、星間暦元年
宇宙船「ノア・アルカ号」乗船初日
ついにこの日が来た。僕たち人類が新たなる母星を求め、宇宙に旅立つ日だ。船内の空気は、期待と不安が入り混じった奇妙な緊張感に包まれている。窓の外には、遠ざかる青い地球が見える。かつては豊かで美しい星だった地球も、今やその表面は荒廃し、ほとんどの生命が住むことを許されない場所になってしまった。
僕たちが地球を離れる理由はシンプルだ。ここではもう、生き延びることができないからだ。気候変動、放射能汚染、資源枯渇――これらはすべて僕たちの祖先が引き起こしたものだ。それでも、僕たち「ニューヒューマンズ」は、進化の果てに生まれた新しい体と知性を持ち、未来に希望を繋ごうとしている。
今日は一日中忙しかった。出発前の最終チェックに追われ、ようやく落ち着いたのは宇宙船が地球の重力圏を離れてからだ。船内では、同じく旅立ちを決めた仲間たちがそれぞれの持ち場で作業をしている。僕は「環境維持ユニット」の担当として、船内の空気や水、温度のバランスを管理する役割を任されている。未来の母星に到着するまでの間、僕たちの小さな人工環境が唯一の生命線だ。
夕方、船内の共有スペースで乗組員たちと話をした。老若男女、遺伝子操作を受けたバイオ・ヒューマンズやサイボーグのメカ・ヒューマンズ――種族も背景も異なる彼らが、たった一つの目的のために集まっている。それは「生き延びること」だ。そしてできるなら、新しい星で平和を築くこと。
不安がないわけじゃない。果てしない宇宙の中で、本当に僕たちは新たな母星を見つけられるのだろうか?だけど、地球に留まる選択肢はなかった。この旅に出るしか、生きる道はなかったのだ。
今夜は、地球最後の空を思い出しながら眠ることにしよう。暗い船室の窓越しに見えるのは、無数の星々だけだ。でもその中のどれかが、僕たちの新しい家になるはずだと信じている。
今日から始まるこの旅路が、僕たちにとって希望に満ちたものになるように――。