旅の2日目 – 日記
地球歴2482年、星間暦元年
宇宙船の振動も落ち着き、航行が安定してきた。僕の担当する環境維持ユニットも、今のところ問題なし。酸素濃度、水質、気温――すべて基準値内だ。だが、こういう平穏な時こそ油断が危険だと教えられてきた。特に長期の宇宙航行では、小さな異常が命取りになる。
今日は時間があったので、乗員の一部と話す機会を作った。エンジニアのケインズは、太陽系脱出後のシールド調整について話してくれた。彼の熱意はすごい。地球のことを忘れたかのように未来に集中しているのが印象的だった。
その一方で、共有スペースでは何人かが故郷の話をしていた。幼い子どもたちが「地球には本当に木があったの?」と母親に尋ねる声が聞こえた。その無邪気な質問に、母親が一瞬言葉を詰まらせたのが忘れられない。
僕もあの森林保護区の景色を思い出す。地球は荒廃していたけど、まだ希望を見つけられる場所だった。今、僕たちが目指す新たな星も、あんな希望の地になるのだろうか。
今日は小さな窓から無数の星々を見た。それぞれが新たな可能性に思えてならない。