宇宙船ノア・アルカ号　乗船日記　27日目

旅の27日目 – 日記

地球歴2482年、星間暦元年

今日は船内の食事について考えさせられる一日だった。僕たちが食べるのは、主に合成食品と呼ばれるものだ。栄養バランスは完璧に計算されていて、必要なエネルギーやビタミン、ミネラルがすべて含まれている。でも、どれだけ科学的に最適化されていても、「食べる楽しさ」という点では、地球の食事とは全く違う。

朝食はプロテインペーストと炭水化物ブロックだった。味は控えめだが、飽きがこないように微妙に風味が変えられているらしい。それでも、地球で食べた焼きたてのパンや甘い果物を思い出すと、少し物足りなく感じる。

昼には共有スペースでミラと話した。彼女は「本物の植物から作られた食べ物が懐かしい」と言っていた。バイオ・ヒューマンズの彼女にとって、食べ物は単なるエネルギーではなく、自然との繋がりを感じられるものだったらしい。彼女が育てている植物がいつか船内で食用になるかもしれないという話に、少し期待が膨らんだ。

一方で、メカ・ヒューマンズのゼインは食事をほとんど必要としない。「俺たちはエネルギーチャージで事足りる」と笑っていたが、「それでも味を楽しむ感覚は知りたい」とも言っていた。その言葉に、食事が持つ文化的な価値を改めて感じた。

夜には、みんなで試作された新しいスープを試飲した。わずかながらスパイスが効いていて、少しだけ地球の料理を思い出させる味だった。船内の食事は簡素だけれど、こうした工夫があると、それだけで少し心が温かくなる。

新しい星に着いたら、広い土地で野菜や果物を育て、地球でのような食卓を囲む日が来るだろうか。その未来を想像しながら、今日も合成食品を噛み締めた。