旅の56日目 – 日記
地球歴2482年、星間暦元年
今日はエリスが、地球に残されたメカ・ヒューマンズのリーダー「コンポジターX」について話をしてくれた。彼は現在、メカ・ヒューマンズの首都で技術開発と文明全体の指揮を執っている存在だ。エリスはその役割を「メカ・ヒューマンズの中心を支える柱」と表現していた。
コンポジターXは、ただのリーダーではない。彼は自身の身体を大幅に機械化し、その進化の先にメカ・ヒューマンズが目指すべき未来を提示し続けているらしい。高度な計算能力を活かして、新たなエネルギーシステムや社会構造の設計を行い、常に合理的な選択を導き出す。彼の意思はネットワークを通じて首都全体に広がり、メカ・ヒューマンズの社会を統率しているそうだ。
ゼインにこの話を振ると、彼は少し考え込んでからこう言った。「コンポジターXの能力は驚異的だけど、それがどこまで彼自身の意思なのか分からない時がある」。ゼインはメカ・ヒューマンズとしての誇りを持ちながらも、自分自身がどれだけ「人間」でいられるかという点に葛藤を抱えているようだった。それだけに、コンポジターXの完全なる合理性がどこか遠い存在に感じられるのだろう。
一方、ミラは興味深そうに話を聞きながら、「でも、そんな彼にもかつては普通のメカ・ヒューマンズとしての生活があったんだよね?」と尋ねていた。確かに、彼がどのようにして今の姿になったのか、その過程は謎に包まれている。彼の現在の役割の裏側には、何か大きな決断や犠牲があったのかもしれない。
エリスは、「コンポジターXは未来を見据える力を持つ一方で、過去を残す役割を持たない存在」と言っていた。彼は進化と効率の象徴ではあるが、地球の記憶を語り継ぐことには関心がない。それがニューヒューマンズである彼女との対比を強調しているように感じた。
夜、コンポジターXについて考えながら星を眺めた。彼がこれからメカ・ヒューマンズの未来にどんな影響を与えるのか、僕たちにはまだ分からない。ただ、彼の存在そのものが「進化」という言葉の象徴であり、僕たちが向かう新しい星でどのような未来が待っているかを暗示しているようにも思えた。
コンポジターXが選ぶ道が、彼自身の意志によるものなのか。それとも、進化そのものが彼をそう導いているのか。その答えを知ることはできないが、彼の存在が未来への一つのヒントであることは間違いないだろう。
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