旅の64日目 – 日記
地球歴2482年、星間暦元年
今日、惑星ゼオフォスでの調査活動が一時中断されることが正式に決定された。あの恐ろしい生命体に遭遇したことで、乗員全員が慎重になる必要性を理解していた。僕たちは今、安全な距離を保ちながら、再び踏み込むべきタイミングを見極めている。
エリスが提案した名前に基づき、その生命体は「カルニファクス」と名付けられた。ラテン語で「虐殺者」を意味するその名は、彼らの圧倒的な攻撃力と破壊的な存在感を象徴している。カルニファクスの硬質な外骨格、酸性の分泌物、そして高速で地中を移動する能力は、まさに自然が作り出した究極の捕食者だった。
ライラはまだ医療ユニットでカイの治療に専念している。「彼の体は順調に回復しているけど、精神的なダメージのケアがこれから必要になる」と話していた。カイは意識を取り戻したものの、カルニファクスとの遭遇については多くを語ろうとはしなかった。その目に宿る緊張感が、どれほどの恐怖を感じたかを物語っていた。
ミラは植物ユニットで黙々と作業を続けている。「自然には危険もあるけど、それ以上に希望を見つけたい」と話していた。その言葉に、彼女がどれだけこの惑星の未来を信じているかが伝わってきた。彼女は植物を通じて、この星での生命の可能性を見出そうとしている。
ゼインはカルニファクスのデータを基に、船内で防御手段を設計し始めた。「これ以上、無防備に探索を進めるわけにはいかない」と言いながら、新しい装備のアイデアを次々とスケッチしていた。彼の冷静な分析と行動力が、これからの探査にとって不可欠になるだろう。
エリスはカルニファクスの存在を歴史的な発見と捉えつつも、「この惑星で共存の可能性を見つけることができるのか。それとも別の道を探すべきか」という問いを投げかけていた。彼女の言葉には、科学者としての興味と、人類としての慎重さの両方が含まれていた。
夜、ゼオフォスの遠い影を思いながら窓を見つめた。カルニファクスの存在は、この惑星が単なる新天地ではなく、僕たちの知識と適応力を試す場所であることを示している。調査を中断することは賢明な判断だが、それが永遠に続けられるわけではない。
明日以降、この星での次の一歩をどう進めるべきか、さらに深く考える必要がある。僕たちはここで立ち止まることなく、未来に向かって進み続けなければならない。
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