宇宙船ノア・アルカ号　乗船日記　66日目

旅の66日目 – 日記

地球歴2482年、星間暦元年

カイの手術は無事に成功した。医療ユニットからの報告では、新しい腕はメカ・ヒューマンズの技術とバイオ・ヒューマンズの再生能力が完璧に融合し、想定以上に自然な動きを実現できているらしい。カイはまだリハビリを始めたばかりだが、彼の目にはかすかな希望が戻っていた。「また探査に出られる日を楽しみにしてる」と彼は微笑んで言ったが、その声には少し疲れが感じられた。

一方で、惑星ゼオフォスについての議論は厳しい現実に直面している。カルニファクスという生命体に対抗できる技術も手段もない今、この惑星を次の故郷として選ぶのはあまりにも危険すぎるという意見が大半を占めた。

ゼインは「カルニファクスに対抗する技術を開発するには、膨大な時間とリソースが必要だ」と言い、現実的な判断を促していた。彼はあくまで慎重な姿勢を保っているが、その背中には悔しさも感じられた。

エリスもまた、「ゼオフォスには魅力的な自然環境があるけれど、その自然が私たちを受け入れるとは限らない」と語った。彼女はこれまで集めたデータを基に、この星を諦める決断が未来にとって最善である可能性を指摘していた。

ミラはまだ揺れているようだった。「この星を諦めるのは辛いけど、私たちがここで生き延びられないなら仕方がないのかもしれない」と話しながらも、植物ユニットで育てている緑を見つめていた。彼女の中で、自然との共存への思いは揺るぎないが、それでも現実には抗えないのだろう。

ライラは静かに意見を述べていた。「今は乗員全員の安全が最優先。そのためには次の惑星を探すのが正しい判断かもしれない」と言いながらも、彼女もまたこの星を離れる決断が心苦しい様子だった。

夜、共有スペースでは船内の全員が次の方針について話し合っていたが、空気は重かった。ゼオフォスを諦めるという決断は、希望を一つ失うことに等しい。それでも、僕たちが次の一歩を進むにはこの選択しかないのかもしれない。

窓越しにゼオフォスの影を眺めながら、僕たちの旅がどれだけ過酷なものかを改めて実感した。新しい星を探すという選択は後退のように感じられるが、それもまた未来への前進なのだろう。

明日からは新たな目的地を見つけるための準備が始まる。ゼオフォスでの経験を胸に刻みつつ、僕たちはまた新しい未来を切り開くために進み続けるしかない。