旅の71日目 – 日記
地球歴2482年、星間暦元年
今日、ゼインから新型探査ポッドの開発について報告があった。セリナの厚い霧や未知の環境に対応するための改良が想定以上に複雑で、完成にはもう少し時間がかかりそうだという。その知らせに、船内には少し緊張が走ったが、誰もゼインを責めるような声は上げなかった。むしろ、乗員全員が新たな課題を共有するような空気になった。
ゼインは共有スペースで設計図を広げながら、「霧を通して正確なデータを取得できるセンサーが鍵だ」と説明していた。現状の技術では霧の成分に干渉され、映像や測定データが歪む可能性があるらしい。「このポッドが完成しなければ、セリナでの探査は危険が伴う」と彼は真剣な表情で語った。
カイはその報告を聞きながら、「ポッドが完成するまで、俺たちは万全の準備を進めるだけだ」と前向きに応じていた。彼自身のリハビリも順調で、次の探査に向けた訓練を再開している。「時間があるなら、それを活かすだけだ」と言う彼の姿は、他の乗員たちにも前向きな影響を与えている。
ミラは植物ユニットでの実験をさらに深めている。「ポッドが完成するまでに、セリナでの栽培に使えそうな植物の候補をもっと絞り込みたい」と話していた。彼女が進めている研究は、この旅の中でも特に未来に直結する希望の一つだ。
エリスは、開発の遅れについても冷静だった。「ポッドが遅れるのは仕方のないこと。その間にセリナの環境データをさらに分析して、最善の探査ルートを計画すればいい」と話していた。彼女のように長期的な視点で物事を捉える姿勢が、船内の不安を和らげている。
ライラは、「時間がある分、全員の健康チェックや精神面のケアに集中できる」と言っていた。長期間の旅路では、こうしたケアが重要になる。彼女の存在が、船内に安心感を与えていることは間違いない。
夜、静かな船室で窓の外を眺めながら思った。旅の遅れは決して悪いことではない。むしろ、その時間をどう使うかが未来を変える鍵になるのだろう。セリナに到着するその日まで、僕たちは準備を重ね、学びを深めていくだけだ。
新型探査ポッドが完成したとき、僕たちはきっと今よりも強くなっている。今日という一日もまた、その未来に向けた大切な一歩だと信じて、明日を迎えよう。
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