旅の72日目 – 日記
地球歴2482年、星間暦元年
今日はゼオフォスで採取したサンプルについて、エリスが詳しく報告をしてくれた。調査を中断せざるを得なかった惑星だったが、持ち帰ったいくつかのサンプルが船内の研究に貴重な材料を提供している。
特に注目されたのは、ゼオフォスの地下洞窟で採取された微量の鉱物と、有毒ながらも興味深い特性を持つ液体サンプルだ。鉱物はその成分構造が地球には存在しないもので、エネルギー供給や耐久性のある新素材の可能性が議論されている。エリスは「この鉱物が人類の技術に新たな革新をもたらすかもしれない」と語り、その価値に目を輝かせていた。
一方、ライラと医療チームは、カルニファクスの分泌液から得られたサンプルを慎重に分析している。分泌液は腐食性が非常に強く、無機物を容易に溶かす能力を持つが、適切に希釈すれば医療や消毒に応用できる可能性があるという。「危険と可能性は表裏一体」と語るライラの言葉には、自分たちの状況に対する洞察が込められていた。
ミラはゼオフォスで採取されたわずかな土壌サンプルに興味を示していた。「この土は、表面は過酷でも地下では生命を育む可能性を秘めている」と言い、植物の根が浸透できるかどうかの実験を行っている。ゼオフォスを諦めた今でも、彼女の探求心はその星の未来に向けられているようだった。
ゼインは鉱物サンプルを利用した新型探査ポッドの設計にすでに取り掛かっている。「この鉱物の耐久性を活かせれば、次の惑星探査の安全性が飛躍的に向上する」と語る彼の表情は真剣そのものだった。彼の技術が、今回の経験を新たな可能性に変えようとしている。
カイも興味深そうにサンプルを見ていた。「ゼオフォスは厳しい星だったけど、それでも俺たちに何かを残してくれたんだな」と語り、その表情にはどこか希望が垣間見えた。彼のような姿勢が、船内全体を前向きな気持ちにさせている。
夜、ゼオフォスの記憶を思い返しながら窓の外を眺めた。あの星は僕たちに困難と危険を与えたが、それ以上に未来への手がかりを残してくれたように思える。採取したサンプルが、これからの旅にどんな影響を与えるのかはまだ分からない。しかし、それが希望へと繋がるものであることを信じたい。
僕たちはゼオフォスを離れたが、その星が残したものは、確かに僕たちの中に生きている。それを胸に刻みながら、次の星へ向けて進んでいこう。
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