旅の86日目 – 日記
地球歴2482年、星間暦元年
船外の人工物についての詳細なスキャンが完了した。解析の結果、それは長さ約300メートルの漂流物であり、船のような構造を持っていることが判明した。だが、その外壁は損傷が激しく、機能が残っているのかどうかは不明だ。
ゼインはスキャンデータを確認しながら、「これはただの宇宙ゴミなのか、それともかつて何かの役割を果たしていたのか…」と考え込んでいた。
エリスが過去のデータと照らし合わせたが、地球を離れる前に記録されているどの宇宙船とも一致しない。少なくとも人類が残したものではない可能性がある。
「なら、一体これは…？」
艦長は慎重に判断を下した。
「現時点では脅威と断定する材料はない。しかし、正体不明の人工物である以上、接触するかどうかは慎重に決める必要がある。」
カイは「誰かが探査に向かうべきじゃないか？」と言ったが、ライラがすぐに「危険すぎる」と反論した。まだこの人工物がどんな影響を持っているのか分からない。電磁波の発生源である以上、内部にはまだ何かが動いている可能性もある。
ミラは、「もしこの人工物が誰かの痕跡なら、私たちより前にこの宇宙を旅していた存在がいたことになるね」と静かに言った。その言葉が妙に現実味を帯びて聞こえた。
ゼインはさらに解析を続け、「この船の一部は、未だにわずかに動作している可能性がある」と言った。つまり、完全に廃棄されたものではなく、何らかの機能が残っているかもしれないということだ。
夜、窓の外にその影を眺めた。それは暗闇の中に沈んでいるようで、無機質な塊のはずなのに、まるでこちらを見つめているようにも感じた。
僕たちはどうするべきか？ 調査を進めるべきか、それとも安全を優先し、このまま通過するべきか。
明日、艦長が決断を下すことになる。答えがどんなものであれ、この旅の行く先を大きく左右することになるだろう。
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