旅の88日目 – 日記
地球歴2482年、星間暦元年
探査チームが直接向かう前に、まずは船外ドローンによる調査が実施された。ゼインが慎重に操縦しながら、ドローンを漂流物の周囲へと送り込む。船内のモニターには、その映像がリアルタイムで映し出されていた。
黒ずんだ金属の外壁、無数の傷や破損の痕跡。明らかに長い間宇宙を漂っていたことが分かる。しかし、最も驚くべきだったのは、船体にかすかに刻まれた文字だ。
「これは……?」
エリスが即座に画像を拡大した。表面の損傷が激しく、完全には読めないが、そこには明らかに「人類の言語ではない」文字が刻まれていた。
「地球のどの言語とも一致しないわ。つまり……これは人類が作ったものではない可能性が高い。」
船内に緊張が走った。人類以外の存在が、この宇宙を旅していた? それとも、未知の文明の遺物なのか?
ゼインは冷静にドローンを進め、船体の構造をさらにスキャンした。すると、一部のハッチが半開きになっているのが確認された。
「これ、もしかしたら内部に侵入できるかもしれない」
カイがすぐに「だったら探査チームで向かうしかないな」と前のめりになったが、艦長は慎重だった。
「まずはドローンを内部に送る。安全が確認できるまでは決して乗員を近づけるな。」
ドローンはゆっくりと開いたハッチへと進んだ。その先に広がるのは、暗闇に沈んだ無機質な空間。しかし、その内部を照らした瞬間、全員が息をのんだ。
そこには、まるで制御室のような構造が残っていた。
コンソールのような機械、配置された座席、そして……人型ではない何かの残骸。
「……これは遺体なのか?」
カイが呟いた。だが、それはすでに朽ち果て、無数のケーブルに絡まるようにして残された異形のものだった。
「これは、誰のものなのか?」
ミラが静かに言った。
船内の空気が凍りつく。人類以外の存在、それがこの船を作り、ここで何かをしていた。そして今は……もういない。
「これ以上の調査は慎重に進めるべきだ」
艦長の言葉に、全員が黙って頷いた。
僕たちは何かとてつもないものを見つけてしまったのかもしれない。明日、探査チームがこの漂流物の中へと入ることになる。
その先に何が待っているのか、誰にも分からない。
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