旅の90日目 – 日記
地球歴2482年、星間暦元年
今日はエリスが回収したデータの解析を進めた。未知の文字列で暗号化されていたが、一部のシステムログを復元することに成功した。
「これ……何かの記録みたいね」
エリスの声に、船内の緊張が高まる。ログの断片を解析すると、それがこの船が遭遇した出来事を示していることが分かった。
「異常発生」
「生存者なし」
「封鎖成功」
翻訳できた単語はわずかだったが、それだけでもこの船で何が起こったのかを想像するには十分すぎるものだった。
「封鎖……?」
誰もが同じことを考えた。探査チームが見つけた「警告」の扉の向こうには、何かが封じられているのではないか。
カイはじっとデータを見つめながら、「つまり、あの扉の向こうに答えがあるってことか」と呟いた。
「それが”答え”とは限らない」
ゼインが静かに言った。「そこに何があるのかは分からないが、封鎖されていた理由を考えた方がいい。下手に開けるべきじゃないかもしれない。」
艦長も慎重な判断を下した。
「現時点では、扉の向こうを調査するべきではない。まずはさらに解析を進める。」
それが賢明な決断だということは誰もが理解していた。しかし、データの「生存者なし」という言葉が気にかかる。
この船の元の乗員は、何かと遭遇し、それに敗れたということなのか?
夜、船室でログの断片を繰り返し眺めた。情報が足りなすぎる。だが、一つだけ確かなことがある。
この漂流船には、まだ何かが眠っている。
それが、僕たちにとっての脅威なのか、それとも知るべき真実なのか……それが分かる日が来るのだろうか。
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