旅の92日目 – 日記
地球歴2482年、星間暦元年
今日は一日中、エリスとゼインを中心に漂流船のデータ解析が続けられた。昨日までのログでは不明な点が多かったが、新たに復元された断片がいくつか見つかった。
「生存者0名、最後の封鎖処理完了」
「外部信号受信 – 識別不可」
「船内生命体 – 1」
「……1?」
エリスがその文字列を読んだ瞬間、船内の空気が固まった。
「クルーは全滅していたはずなのに、なぜ”生命体1″の記録が残っている?」
誰もが同じ疑問を抱く。クルーの生存率は0%と明記されていた。それなのに、記録上ではこの船に1つの生命反応が残っていたことになる。
ゼインが慎重に分析を続ける。
「このデータは最後の通信ログと一緒に記録されている。つまり……何かが生き残っていた可能性がある。」
ライラが顔をしかめ、「それって、今も生きているってこと?」と尋ねると、ゼインは即答しなかった。ただ、彼の目は真剣だった。
「まだ判断できない。でも、仮にこの生命体がまだ機能しているとしたら、封鎖の扉の向こうに……」
カイが苦笑しながら肩をすくめた。
「……いるってことになるな。」
全員が黙り込む。艦長も深く考え込んでいたが、しばらくして「現時点で封鎖を解除することは許可できない」と静かに言った。
「まずは生命反応の確認を優先しろ。この船に何が起こったのか、より明確なデータが必要だ。」
僕たちは、その判断に異論はなかった。無闇に扉を開けるのはあまりに危険すぎる。
エリスはさらに深くログの解析を進めることになり、ゼインは船のスキャナーを強化し、封鎖区域内の物質データを探ることになった。
夜、窓の外を眺めながら考えた。
“何か”がこの船で起こった。そこには”誰か”がいた。
そして、その”誰か”は、もしかすると今もそこにいるのかもしれない。
この封鎖が解かれたとき、何が起こるのか——僕たちはまだ、知る準備ができていない。
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