旅の106日目 – 日記
地球歴2482年、星間暦元年
今日はエリスに昨日見つけたログについて相談した。封鎖システム起動時に記録された、わずか1.6秒の内部応答についてだ。
彼女はそのデータをすでに見ていたらしいが、「あまりに短くて、誤作動の一部だと判断していた」とのことだった。たしかに、通信と呼ぶにはあまりに断片的で、意味のある反応かどうかは判断が難しい。ただ、僕が注目したのは、その信号が明らかに封鎖の“直前”に発生していたことだった。
エリスは少し黙ったあと、「確かにタイミングは妙ね」と言って、再解析に協力してくれることになった。改めて信号の波形を取り出し、類似のパターンが他の記録にないかを調べてみる。
ゼインにもその旨を共有しておいた。封鎖システムのハードウェア構成や、内部のセキュリティ層に何か特異な設定があるかもしれないとのことだった。彼も特に異論はなく、「気づいたならやってみろ」と淡々としていた。
こういうやりとりができる仲間がいることは、ありがたい。自分ひとりでは、見落としていたことも多いだろう。
封鎖区域が発する“沈黙”のなかに、かすかな声が混じっていたとしたら、それは過去の記憶なのか、それとも今の誰かの意志なのか。
まだ分からない。でも、こうして記録を重ねることで、少しでも輪郭が見えてくることを願いたい。
調査は静かに、慎重に進める。焦らず、一歩ずつ。
それがこの船の中で、僕にできる責任の取り方だと思う。
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