旅の107日目 – 日記
地球歴2482年、星間暦元年
今日はエリスから連絡があり、昨日の短い内部応答ログについて、ある程度の波形分析が進んだとのことだった。
波形は非常に単純なパターンで、人間の言語に近い構造は見られなかった。けれど、彼女は「完全なランダムとは言い切れない」と言っていた。一定の間隔で信号強度が変動しており、あたかも何らかのリズムのようにも見える、とのこと。
僕もそのグラフを見せてもらった。規則性と言えるほど明確なものではないが、機械のエラーにしては直線的すぎる。仮に“意図的な反応”だったとしても、それが何を伝えようとしていたのかはまだ全く分からない。
ゼインの方でも、封鎖システムの構造について一部確認が進んでいるようだった。ただ、技術的に古すぎる部分が多く、かつての標準規格ではない独自の設計が随所に見られるという。もともとこの漂流船自体が、人類のものではない可能性が高い以上、それは当然のことだ。
今日一日、ほとんどを端末の前で過ごした。画面に映るデータの羅列と向き合っていると、周囲の音が次第に遠のいていく。船の振動、冷却ファンの音、遠くの通話の声。すべてが、外側の世界のように感じた。
時々、自分が今どこにいて、何のためにこの作業をしているのか、曖昧になる瞬間がある。でも、そういうときこそ、静かに向き合うことが必要なんだと思う。
明日も、続ける。何かが見つかると信じているわけじゃない。けれど、見つけようとする姿勢だけは、失いたくない。
今は、それだけでいい。
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