旅の120日目 – 日記
地球歴2482年、星間暦元年
漂流船の解析が少しずつ進む中で、今日は久しぶりに環境維持ユニットの定期メンテナンスに集中した。航行中の船内安定は、こうした地道な作業の積み重ねで保たれている。
一方で、ゼインたちが外部ハンガーの観測モジュールで収集しているデータに小さな異常が現れた。漂流船の一部表面で微弱な電荷の再分布が起きているらしい。エネルギー反応とまでは言えないが、完全に安定しているわけでもない。その現象自体が何を意味するのか、現段階では判断できていない。
エリスは今日も記録データの再解析を続けていた。初期ログに残る短い内部応答が、やはり気になり続けているようだ。今のところ新たな解読は進んでいないが、彼女の粘り強さにはいつも頭が下がる。
ミラは植物ユニットの新しい区画の準備を始めていた。セリナ到達後の環境適応を見据えたテストだという。彼女の手の中では、ここでも確かに生命が育っている。その事実が、今は何よりも安心材料になっている気がする。
日々わずかずつ、船内は進んでいる。漂流船の正体も、セリナの地表も、まだ遠い先にあるが——少なくとも今は、穏やかな一日だった。
明日もまた、慎重に歩を進める。
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