旅の121日目 – 日記
地球歴2482年、星間暦元年
本日も漂流船の観測を継続。大きな異常はなかったが、わずかながら船体表層の温度変動が記録された。極微小なレベルであり、通常の機械的な断熱反応とも解釈できるが、完全な自然現象と断定するにはまだ慎重さが必要だとゼインは話していた。
このような断続的な小さな反応が続く以上、やはり漂流船は単なる「廃墟」では済まされない存在であることを改めて実感する。だが、それが危険なのか、あるいは純粋に未知の技術によるものなのかは依然として判断がつかない。
午後はエリスが過去の航行記録と照合し、回収した航行ログと星系データの突合せを進めていた。まだ座標の正確な解釈には至っていないが、いずれ何らかの航路を辿っていた可能性は高いとみている。
この船が、どこから来て、何を失い、そして今どこへ流れ着いたのか。情報の断片は揃いつつあるが、全体像にはまだ距離がある。
今日の夕食は、例によってケイトの新しい合成食だった。海藻ベースのスープにわずかな酸味が加わり、味の幅が広がっている。食事という日常の安定感が、この旅の中では静かな支えになる。
漂流船の中にも、誰かの日常がかつて存在していたのだろうか。そう思いながら今日も静かに記録を残す。
明日もまた、慎重に進めていく。
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