旅の123日目 – 日記
地球歴2482年、星間暦元年
本日、漂流船の複層構造サンプルの第一回採取作業が実施された。ゼインが調整したドローンは安定して作業を行い、外殻のごく一部から微細な素材片を回収することに成功。
サンプルは即座に無菌処理され、分析室へ運ばれた。初期分析では、有機成分の混入は認められず、高密度な複合金属素材が主体。だが、内部に微細なナノ構造体が埋め込まれている可能性が示唆されている。
エリスは「情報媒体の一種かもしれない」と静かに語っていた。もしそれが正しければ、漂流船の本体そのものが単なる輸送船ではなく、何らかの記憶装置、あるいは記録媒体の性質を持っている可能性がある。
まだ仮説に過ぎない。だが、長い漂流の末にここまで運ばれてきたものが、単なる残骸ではないという感覚が徐々に強まってきている。
今はまだ全てが断片だが、少しずつ線が繋がり始めているようにも思う。
夜は短く植物ユニットを訪れた。船内の静かな照明の中で、ミラが新芽の手入れをしていた。あの穏やかな空間が、こういう時は心地よい。
明日もまた、慎重に。記録は続ける。
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