旅の124日目 – 日記
地球歴2482年、星間暦元年
今日も複層構造のサンプル解析が続いた。ゼインとエリスの報告によれば、内部のナノ構造体には極めて高度な自己整列性が確認されたらしい。素材自体が情報を保持している可能性が、より現実味を帯びてきた。
仮にこの漂流船が記録媒体だとすれば、そこに残された情報はおそらく断片ではなく、極めて長期間維持されることを前提に設計されたものだろう。構造そのものが「失われないこと」を最優先にしている印象がある。
封鎖区域の存在も含め、この船の目的は単なる輸送や航行ではなく、何かの記憶や記録を宇宙の中に残そうとした試みだったのかもしれない。
ミラは今日、実験用の新たな植物培養槽を完成させていた。生命を維持することの難しさと、同時にそのしなやかさを、こうして日々見せられているように感じる。
漂流船もまた、ある意味では”生き延びている”のだろう。たとえ、その中に今は誰も残っていなくとも。
明日も静かに観測と解析を続ける。焦らずに、事実を積み重ねていく。
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