宇宙船ノア・アルカ号 乗船日記 130日目

旅の130日目 – 日記
地球歴2482年、星間暦元年

データ抽出は本格的な初期段階に入った。今日もエリスとゼインを中心に、格納核から取り出された断片の解析が進められている。

未知の記号体系は複雑だが、ある種の規則性が少しずつ見え始めたらしい。完全な言語とは限らず、情報圧縮用の符号化手法に近い可能性も出てきている。エリスは「単純な翻訳の問題ではない」と静かに言っていた。むしろ、思考体系そのものの違いに触れている感覚だと。

まだ現時点で内容の解読は一切進んでいないが、構造から見る限り、これは膨大な情報を内包していると考えて良さそうだ。航行記録なのか、歴史的記憶なのか、技術知識なのか——それすらも、まだ分からない。

艦長は慎重に全体を見守りながらも、「ここからが正念場だ」と短く言った。私も同じ気持ちでいる。ここから先は、ただの物理調査とは異なる。相手は情報そのものであり、私たちの理解の枠組みを試してくる。

帰り際にミラの植物区画を訪ねた。新しく芽吹いた小さな苗を見ながら、少しだけ呼吸が整った。ゆっくり、静かに、それでも着実に育つものがある。

今はまだ手探りだが、漂流船の「声」を拾い始めている感覚が、確かにここにある。
明日もまた、一つずつ進めていく。

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