旅の134日目 – 日記
地球歴2482年、星間暦元年
本日もドローンによる中枢データ層の解析が続いている。エリスの進めている再構成作業によって、映像断片の明暗変化に奥行き情報があることが、より明確になってきた。どうやら単なる二次元映像ではなく、環境そのものの立体情報を含んだ記録の可能性が高まっている。
一方で、物理的な未知区画の存在はまだ確認されていない。ただ、エネルギー分布にごく小さな局所異常が散見される箇所があり、ゼインがさらに高精度なスキャンを準備している。隠された構造物があるかどうかは、もう少し時間が必要だろう。
艦長は相変わらず冷静な判断を続けている。現在の段階では、有事対応チームを待機させつつ、解析班を優先して進める方針に変更はない。今の空気は張りつめたものではなく、慎重な集中が船内に保たれている。
日中の作業が長引いたこともあり、今日は短い時間だけ植物区画を歩いた。発芽した苗たちが順調に伸びている姿は、変わらぬ安心を与えてくれる。
未知の知性が眠るかもしれない漂流船と、静かに育つ植物。まったく異なるものだが、どちらにも確かな秩序と意志の痕跡を感じる。
明日もまた、変わらず記録を積み重ねる。焦らず、ひとつずつ。
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