旅の138日目 – 日記
地球歴2482年、星間暦元年
今日は、未知空間の解析を進めるチームのサポートにまわった。
直接内部に入るのは調査班の役目だけど、僕の環境ユニットの知識が役に立つ場面もある。酸素濃度や空間内の微粒子、温度変化のログから、この空間が「最近まで使われていた可能性」があることが分かった。漂流船がどれだけ長く漂っていたとしても、いくつかの装置はまだ活動している――それが何よりも不気味だ。
ゼインは終始無言で作業をしていた。たぶん、彼なりに何かを感じ取っているんだと思う。
ああいう時のゼインは、何かを考えていて、でもそれをすぐに言葉にするタイプじゃない。きっと今夜か明日には、ぽつりと核心をついた一言をくれるんだろうな。
今日は、船内の通常業務にもどる時間が少しあったので、植物ユニットのミラとも久しぶりに話した。
「ゼオフォスのこと、最近あまり口にしないね」って言われて、はっとした。たしかに、セリナや漂流船に気を取られて、あの出来事を心の奥に押し込めてたかもしれない。
夜は資料を見返しながら、漂流船の構造図をスケッチしてみた。調査ログだけだと見落とす細部があるから、あえて手で描いてみる。アナログだけど、意外と有効なんだよね。
明日は、エリスの言語解析が一段落するらしい。どんな仮説が出てくるのか、少し楽しみでもあり、不安でもある。
この漂流船が“何かを伝えようとしている”としたら、その声を聞き取るのは僕たちの責任だと思うんだ。
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