旅の143日目 – 日記
地球歴2482年、星間暦元年
今日も例の「ケースの男」は目を覚まさなかった。
ライラは慎重だ。下手に刺激を与えず、生命維持を最優先にしてる。今はそれが正しい判断だと思う。
一方で、ゼインとエリスの解析は着実に進んでいて、今日ひとつの仮説が浮かび上がった。
彼の生命維持システムに使われていた技術――どうやら、僕たちメカ・ヒューマンズの一部機構と“構造的な共通点”があるらしい。
もちろん、設計思想も素材も全然違うんだけど、「自己修復」と「状態保持」という点において、非常によく似たロジックが使われていたらしい。
ゼインはそれを「同じ問題に別の時代からアプローチした結果かもしれない」と言ってた。
つまり、この漂流船がどこから来たのかは分からなくても、彼らもまた――どこかで“限界を越える”という壁に直面していたということになる。
僕たちが今やろうとしていることと、重なる部分があるのかもしれない。
それにしても、この漂流船がここにある意味は何だろう?
誰かがここまで導いた? それとも偶然の流れ着き?
いずれにせよ、漂流船の内部に“彼以外の存在”がいなかったことだけが、いまだに不思議でならない。
明日は、ゼインがケースの外装をさらに解体して、中の「記録媒体らしきもの」の確認を行う予定らしい。
そこに何か残っていれば、ようやくこの長い謎にも終わりが近づくかもしれない。
それまで、僕は――ただ見守るしかない。
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