旅の146日目 – 日記
地球歴2482年、星間暦元年
今日、ついに漂流船の隔壁が開かれ、未知の球体構造の内部へと調査ドローンが進入した。
その内部は、予想以上に広く、まるで「ホール」と呼べるような空間だった。高い天井に無数の管や光ファイバーのようなものが張り巡らされ、中心には直径3メートルほどの半透明の球体が浮かんでいた。
それは…なんというか、見た目には「人工物」にも「生物」にも見えた。構造は明らかに整っているのに、表面がわずかに呼吸するように脈打っていて、無機と有機の境界が曖昧だった。エリスは「これは記憶装置か、生体演算装置かもしれない」と言っていたが、今の時点ではどちらとも断定できない。
ただ、明らかなことが一つある。
この球体は“まだ生きている”。
ドローンが近づいたとき、球体の表面に微弱な光が走った。まるでこちらの存在を認識したかのように。それはセンサーの誤作動ではなかった。波形として記録され、再現可能な反応だった。
さらに、周囲の壁面には浮かび上がるような模様――言語とも記号ともつかないものが現れ、ドローンのカメラに記録された。それは幾何学的なラインと渦の組み合わせで、何かの情報を伝えようとしているようだった。
僕はずっとその映像を見ながら、「この漂流船には目的があった」と確信した。
偶然ここにたどり着いたわけじゃない。彼ら――この船の設計者か、かつての乗員は、明確な意図をもってこの“中枢”を封じ、眠らせたんだ。
ゼインは明日、外部干渉を最小限に抑えた小型の解析ユニットを送り込む計画を立てている。直接触れることなく、内部構造や記憶データを探るための試みだ。
いよいよ核心に近づいている気がする。
この未知の存在が何を知っているのか、どこから来たのか――
その答えは、あと少しで見えてくるかもしれない。
明日は、その第一歩になるはずだ。
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