旅の151日目 – 日記
地球歴2482年、星間暦元年
球体内部の第二段階調査。
昨日発見した「記録層」のさらに奥、コア構造の周囲へドローンを進入させた。中継映像には、さらに複雑な構造物が映し出された。まるで“神経”が伸びているようだったが、機械的なそれとは異なる、どこか有機的で不規則な脈動があった。
ゼインは一度言葉を飲み込んでから、「これは、自己修復機能を持つ未知の素材だ」とだけ言った。ライラも同意していた。ドローンが照射した熱や光に対し、球体内部の組織がわずかに反応を示し、元に戻る。その動きは、まるで“呼吸”のようだった。
その中心にあるコア構造。直径1メートルほどの透明な結晶体で、内部に緩やかに回転する光の粒子が浮遊している。何かしらのエネルギー保存装置か、あるいは……記憶媒体のようなものなのかもしれない。
エリスは、「ここに、何かの“生”が記録されている可能性がある」と言っていた。まるで生命の最後の記録。もしこの漂流船が、ある文明の最期を見届けたものであるなら――その記録が、今も球体の中で鼓動しているのかもしれない。
僕は、あの場所を“遺跡”と呼びたくなる。
ただの船じゃない。そこには意志があった。痕跡があった。思いがこもっていた。そう感じさせられる何かが、静かに息づいていた。
今日の調査では直接接触は控え、電磁波解析と周波数変調による信号の取得を試みた。わずかに反応があったが、それが“通信”なのか、単なる反射なのかはまだ判断できない。
それでも、何かがこちらを見ているような気がしてならなかった。
この宇宙のどこかで生まれ、遠くまで旅をして、そしてここで朽ちた何か。その記録を、僕たちはもう少しだけ、近くで見守ることになる。
明日、さらに深く踏み込む予定だ。
慎重に、でも確かに、前へ進もうと思う。
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