旅の161日目 – 日記
地球歴2482年、星間暦元年
今日は「休符」の解析に時間を費やした。
応答波形の間隔を細かく計測すると、同じ周期が繰り返されているだけではなく、三種類の長さが組み合わさっていた。これは単なるノイズではなく、意図的な構造だと考えられる。
もし言葉に置き換えるなら、母音や子音のような“要素”に近いのかもしれない。まだ仮説の段階だが、これを「基本単位」として組み合わせていけば、やがて意味を持ったパターンに到達できるかもしれない。
ただ、その一方で不安もある。こちらの解釈が間違っていた場合、返答が意図しない方向に作用する可能性があるからだ。言語は常に誤解と表裏一体だ。まして相手が未知の存在であればなおさら。
夜、自室でログを整理しているとき、ふと自分の心拍を意識した。一定のリズムの中に、ときどき揺らぎがある。それは生きている証であり、単なる機械には生まれない“間”だ。
球体の応答も、それに似ている気がする。そこに命があるかどうかは分からないが、少なくとも「生きていた痕跡」は確かにある。
明日は応答パターンを音声化し、船内での共有実験を行う予定だ。
僕たちが聞く「声」が、どんな響きを持つのか――少し緊張している。
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