旅の164日目 – 日記
地球歴2482年、星間暦元年
今日はついに、球体へ向けて最初の「挨拶」を送った。
昨日までに組み立てたリズムパターンを基盤に、できるだけ単純で誤解を招きにくい構成を選んだ。短い信号を三回、その後に少し長い休止を入れる。もし相手が反応するなら、わかりやすい形式になるはずだ。
結果は……応答があった。
送信後、数秒の沈黙のあと、球体の表面がゆっくりと発光し、こちらのパターンを模倣するように光を返した。ただの模倣ではなく、三回目の発光のあとに、追加の「休符」が挟まれていた。
それはあたかも、こちらの呼びかけに「理解した」と告げるような返事に思えた。
解析班は即座にログを確認し始めたが、僕自身はただその光景を見つめていた。未知の存在と、今まさに最初の対話を交わしたのだという事実に、言葉が出なかった。
夜、自室でその瞬間を思い返している。
あれは本当に返事だったのか。それとも偶然か。確証はまだないけれど、胸の奥ではすでに答えを知っているような気がする。
明日はさらに複雑なパターンを試す予定だ。
僕たちの旅が、この瞬間から少しだけ新しい段階に入ったことだけは、確かだと思う。
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