旅の170日目 – 日記
地球歴2482年、星間暦元年
今日、予定通り「五」の信号を送った。短い拍を五回、その後に休止を置く。シンプルで明確、誤解の余地が少ないパターンだ。
返ってきた応答は、驚くほどはっきりしていた。球体は五度の光を返し、さらにわずかな間を置いて六度目の光を放った。昨日の「四」と同じく、こちらの呼びかけを繰り返しながら、その先を示すような仕草だ。
記録を見直すと、六度目の光の間隔は他よりも長く、まるで強調しているように思える。単なる数列の延長か、それとも別の意味を含んでいるのか。答えはまだ出ていない。
この応答を見ていると、不思議と胸の奥が静かにざわめく。相手は数を理解しているだけでなく、「次へ」と導こうとしているのかもしれない。僕たちがまだ知らない、もっと複雑な対話の形へ。
船内の空気も変わった。誰も口に出さなかったけれど、皆が「これは始まりだ」と感じているのが伝わってきた。
明日は、さらに踏み込むかどうかを決める会議になる。
少し怖さもあるが――それ以上に、強い期待がある。
コメント