旅の173日目 – 日記
地球歴2482年、星間暦元年
昼過ぎ、突然、船内にアラームが響いた。
耳に馴染んだ定期点検用の信号音ではなく、もっと鋭く長い警告音。心臓を掴まれるような感覚に、作業していた端末から思わず立ち上がった。
すぐに艦内通信が入り、原因は「外部センサーの異常値検出」だと知らされた。漂流船周辺の空間で、通常では説明できないエネルギー反応が一瞬観測されたらしい。敵性や衝突の危険は確認されていないが、乗員全員に警戒態勢が敷かれた。
解析班もすぐに呼び出され、僕も現場に戻った。センサーの記録を見直すと、ほんの数秒だけ不自然な電磁波の揺らぎが残っていた。周期性を持ち、自然現象とは思えない。昨日まで解析していた球体の信号と似た特徴があるように見えるが、直接の因果関係はまだ不明だ。
一時的に緊張が高まったが、アラームはほどなく解除された。それでも、船内には重い空気が残ったままだ。
もしあの揺らぎが偶然ではなく、球体からの影響だったとしたら――僕たちはすでに、思っていた以上に深く繋がってしまっているのかもしれない。
夜、自室でその音を思い返している。アラームの警告音と、解析データの波形が重なり、奇妙に調和して聞こえる気がした。
これは危険の兆しか、それとも新しい“対話”の始まりなのか。明日には、何らかの答えが見えてくるだろう。
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