旅の176日目 – 日記
地球歴2482年、星間暦元年
今日は一日、漂流船からの信号をどう解釈するか、正式に議論が行われた。
結論から言えば、多くの意見が「これは対話の一部として受け止めるべきだ」という方向にまとまった。単なる偶然や機械的な反応で説明できる部分は確かにあるけれど、ここまで一貫して規則性が続いているのは不自然すぎる。
議論の中で強調されたのは「焦らないこと」だった。相手が何者であれ、こちらが急いで複雑な信号を送りすぎれば誤解を招きかねない。だからこそ、今後は段階的に「返答」を試みることが決められた。まずは数列を続け、次に単純な変調を組み込む。その繰り返しで、相手がどう応じるかを確かめていく。
会議の後、植物区画を歩きながら考えた。葉の枚数を数える行為が、いつのまにか漂流船とのやり取りと重なって見えてくる。数えるということは、世界を理解する最も原始的な手段だ。相手が本当に「数」で語りかけてきているのなら、それは人類と共通する根源を持っているのかもしれない。
明日は新しい信号の設計に取りかかる。
一歩ごとに慎重に、だが確かに前へ進んでいる実感がある。
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