旅の180日目 – 日記
地球歴2482年、星間暦元年
漂流船の中で発見された透明なケースの中に眠っていた男――あの存在に、ついに変化があった。
定期的に行っていたモニタリングで、今日は明らかな反応が確認された。心拍に似た微弱な脈動が記録されたのだ。完全に覚醒したわけではないが、静かに続いていた沈黙が初めて破られた瞬間だった。
ケースの内部は、これまで冷却液で満たされており、生命維持装置のような機能を果たしていたと考えられている。今日の反応は、その装置が自動的に「目覚めの準備」に移行した結果なのかもしれない。あるいは、僕たちが球体に信号を送り続けたことで、何らかの連動が起きた可能性もある。
船内は緊張感に包まれた。未知の存在を前に、期待と不安が入り混じった空気が漂う。僕自身も胸がざわついた。これまで“記録”としてしか捉えられなかった漂流船が、今まさに“生きている存在”として姿を現そうとしている。
まだ目を開けることはなかったが、確かに「そこにいる」と実感させられた。
彼は誰なのか。最後の生き残りなのか、それともまったく別の存在なのか。
明日以降も慎重に観察が続けられる。
だが今日を境に、この調査は新しい段階へと入ったことは間違いない。
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