旅の183日目 – 日記
地球歴2482年、星間暦元年
眠り続けている男のケースに、さらに新しい変化があった。
午前中の観測で、彼の脳波に相当するパターンが記録された。まだ不規則で浅い反応ではあるが、確かに「意識活動」と呼べる兆しだ。昨日までの脈動や筋肉反応と違い、これは内面の目覚めを示すものだろう。
ただ同時に、ケースを取り囲むエネルギー波も強まってきている。防御的な機構なのか、それとも覚醒のプロセスの一部なのかは不明だ。あまりに不用意に近づけば、装置が自動的に反応する可能性がある。調査班は距離を保ちながら、センサーでの観測を続けている。
僕自身は、彼がどんな姿で目を覚ますのかを思い浮かべずにはいられない。漂流船の球体が示してきたリズムや数列の応答と、彼の覚醒が同時進行していることは偶然ではない気がする。
もし彼が、この船そのものの「記憶」や「意思」を体現している存在だとしたら――僕たちはこれから、人類の歴史で初めて“異なる進化の人類”と直接言葉を交わすことになるのかもしれない。
明日も観察は続く。
彼が次に示す兆候が、目覚めか、それとも別の何かなのか……その答えを前に、胸が高鳴っている。
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