旅の184日目 – 日記
地球歴2482年、星間暦元年
ケースの中の男に、さらに顕著な兆しが現れた。
今日は明確に「呼吸」に似た動きが観測された。微弱ながら胸部が規則的に上下しており、生命維持装置だけでは説明できない反応だ。脳波の活動も昨日より安定し、周期的な波形が見られるようになった。まるで深い眠りから浅い眠りへと移行しているようだった。
船内は緊張感に包まれている。誰もが彼の目覚めを予期しながらも、実際にその瞬間を迎える準備ができているかどうかは分からない。未知の存在を受け入れることは、僕たちにとって祝福であると同時に、大きな試練でもある。
僕は観測ログを見ながら、彼がもし目を覚ましたら最初に何を思うのかを考えていた。孤独か、安堵か、それとも警戒か。彼が見てきた世界と僕たちの世界は、きっと大きく異なる。けれど数列やリズムを通して示された「繋がり」がある限り、対話の可能性を信じたい。
明日、さらに変化があれば――その瞬間は、もはや避けられないだろう。
長い沈黙の終わりが、近づいている。
コメント