旅の186日目 – 日記
地球歴2482年、星間暦元年
今日も観測を続けた。ケースの中の男は、安定した呼吸と脈動を維持しており、脳波の活動もさらに明確になってきている。周期の中に規則性が増し、もはや「眠りの深層」ではなく、覚醒直前の状態に近づいているように見えた。
信号パターンとの比較も続けている。特に注目したのは、球体から返される光のリズムと、彼の脳波に見られる波形だ。解析結果では、両者が一定のタイミングで同期している瞬間があることが確認された。周期のズレはわずかだが、確かに関連を示している。
これは偶然ではないだろう。彼が目覚めようとしている過程そのものが、球体の「応答」に影響を与えているのかもしれない。
一日の終わりに、植物区画を訪れた。静かな緑の中で耳を澄ますと、心拍や呼吸のような自然のリズムが感じられた。生命とは常に周期の積み重ねでできている。球体の光も、彼の脳波も、その大きなリズムの一部なのだと思うと、不思議な一体感を覚えた。
明日は、ケースの覚醒プロセスと球体信号の同調をさらに詳細に測定する予定だ。
いよいよ「その瞬間」が近づいているのを、肌で感じている。
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